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わたしの残したい志木の風景

絵・文 松本恭子

アオダイショウの棲む寺「宝幢寺」

 

 山門をくぐり、空を覆い尽くす欅・銀杏の老木の前に立つと、すうーっと涼しい風が通 り抜けてゆく。雨に洗われた梢からこぼれ落ちる水滴は、光と風の中で、宝石をちりばめたようにまぶしく輝く。

 柏町の高台に位置するこの寺は、古くからこの地域に住む人々の菩提寺として今に受け継がれ、夕方、定刻に告げる鐘の音がこの町のシンボルとして親しまれている。この地区にある志木小・志木第三小学校の子供たちは、写 生会でこの境内を探索し、思い思いの風景を絵に残している。我が家にも息子の拙い社殿の絵があり、遊んだあげくにやっとでき上がったと思われる手あかの数々がなつかしい。

 4月下旬に、境内の真ん中にある満開のしだれ桜の下でTさんとお花見をした。そのとき、木蔦に覆われ尽くされ、目の高さの部分だけしか見えない巨木が、ムクロジであることを教えてくれた。根本周辺に落下しているたくさんの黒い種子が、「羽根つきの羽根の球につかわれるのよ」、ああこれだったのか。この季節になってやっと、若葉を繁らせ梢を広げたその全体を知ることができた。

 暖まって白く乾いた砂利と石畳の上を、するするとアオダイショウが横切っていく。体の色はまだ薄く、灰褐色地に暗褐色の帯状模様は実に若々しく美くしい。花菖蒲の水辺から、多羅葉の根本の茂みへとかくれてしまった。この寺の守護神かも知れない。

 整然として品位のあるこの寺の生き物たちは、私たちの身近な憩いの場として四季を通 じて楽しませてくれている。

(エコシティ志木通信第11号 1998年5月)

 

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