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わたしの残したい志木の風景

絵・文 松本恭子

柏町三丁目「長勝院跡の野仏」

 

 志木第三小学校の校門の所に「この地が『史跡 柏の城跡』である」との立て看板がある。この付近は高台になっていて、ニュータウン、館方面 から来ると道は少し上り坂であり、裏を流れる柳瀬川の土手から歩いて来るともっとそのことはよく分かる。

 校舎西側の竹薮がそのまま地続きになった所に長勝院跡地がある。多くの地蔵尊や樹齢四百年以上のヤマザクラや、幹周りが大人の腕を拡げて二つ半はあるヒノキの老木の存在が、由緒ある地であったことを彷彿とさせる。にもかかわらず、町内の地図上には『駐車場』とだけ記されている。私有地であることは一目瞭然。

 悠久の時を経て今なお生き続けている史跡、自然がありながらも、立て看板を備え付けるだけの市政のあり方に憤りすら感じる。

 穏やかなお顔のお地蔵様をながめていると、その表情を彫った人のこと、その時代のこと、そしてかつての長勝院を訪れた人々のことに思いを馳せる。写 生に時を忘れ、いつしか夕暮れとなり秩父連山を影絵として、茜色に空を染めて沈んでいく夕陽がとても美しかった。

 わずかに残された志木市内の緑地の保存を求めて、親しい友人は『緑の基金設置を』と、市政へ働きかけている。

(エコシティ志木通信第5号 1996年11月)

 

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