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柳瀬川の自然エリアのお宝

 

柳瀬川の水生生物


天田 眞
(河童のつづら館長・NPO法人エコシティ志木代表理事)2008年3月

観察風景

↑観察風景

 柳瀬川は30〜40年程前にはかなり汚れた川でしたが上流域の下水道整備に伴い徐々に水質が改善され、最近では姿を消していた魚達も戻ってきました。
 エコシティ志木では2001年から柳瀬川で主に魚やエビ等を中心に定期的な生息調査を行ってきましたが、昨年3月からは、それまで不定期だった川底に生息する昆虫やその他の小動物の調査も、毎月1回、志木中前で実施しています。まだデータの蓄積も少なく種の同定も充分ではありませんが、主な生物を紹介します。
 ヤゴ以外は大変小さな虫で、主に水深の浅い川底の石の下や砂の中に生息しているものを目の細かな網ですくって捕獲します。
 こうした生物の生息状況は水質の判定にも利用されますが、柳瀬川の水質は〔きれい/少し汚れた/汚れた/たいへん汚れた〕の4段階で判断すると〔少し汚れた〕のランクと判断されます。

 1.昆虫

■トンボの幼虫
 柳瀬川で最も多いヤゴはハグロトンボ。他にギンヤンマ、コオニヤンマ、コヤマトンボ、シオカラトンボ等が見つかる。川岸に水生植物が生えているようなところで生息し、小動物や小魚を食べている。
■カゲロウの幼虫
 幼虫時を水中で過ごし、羽化した後は交尾産卵しまもなく死ぬので、はかないものにたとえられる。クサカゲロウやウスバカゲロウとは全く異なる種。体長7mm程度のコカゲロウ科の仲間(サホコカゲロウ、シロハラコカゲロウ等)が多い。腹部の両側に7対の木の葉のようなエラがある。石に付着する藻類を食べる。始めに羽化した状態は亜成虫と呼ばれ約1日後にもう一度脱皮して成虫になる。

 ギンヤンマ   シロハラコカゲロウの幼虫   シロハラコカゲロウの亜成虫 
ギンヤンマ(左下)コオニヤンマ(右上) シロハラコカゲロウ幼虫 シロハラコカゲロウの亜成虫

■トビケラの幼虫
 川底の石の間や表面に小さな石粒を集めて接着した巣をつくり、巣の前に糸で網を張り流れてくる有機物を集めて食べる。
 体長10mm程のシマトビケラの仲間(ウルマーシマトビケラ、コガタシマトビケラ等)が多い。イモムシ型で腹の部分に多くの木の枝状に細かく枝分かれしたエラがある。蛹期間を経た成虫は小さな蛾に似ている。
■ユスリカの幼虫
 汚れた水で大発生し不快害虫として問題になるセスジユスリカ(アカムシ)は少なく、体長8mmほどで薄茶色をしたエリユスリカの仲間が多い。付着藻類などを食べる。(セスジユスリカはヘドロの中の有機物を食べる。)

 ウルマーシマトビケラ幼虫   ウルマーシマトビケラ成虫   ミズムシ 
ウルマーシマトビケラ幼虫 ウルマーシマトビケラ成虫 ミズムシ
 2.昆虫以外の虫

■ミズムシ(節足動物甲殻綱)
 ワラジムシに良く似た虫。体長 10 mm程度。汚れた水に多く、川底の有機物を食べる。
■ヨコエビの仲間(節足動物甲殻綱)
 体長8mm程度のエビに近い種だが、ハサミはなく頭は小さく、三日月状に体を曲げている。水中をせわしなく泳ぎまわる。川底の有機物を食べる。
■イシビルの仲間(環形動物)
 イシビル科に属するイシビルやシマイシビルがいる。平たいナメクジ型で端部の吸盤で石の裏に吸い付き伸び縮みし、体長 20〜50 mm位。小さな水生動物を食べる。
■ナミウズムシ(扁形動物)
 プラナリアとも呼ばれる。石の裏に張り付いていて、ヒルのように延び縮みし体長 10〜20 mm位。付着藻類を食べる。体をいくつかに切り刻むと、それぞれが独立個体に再生する。
■モノアラガイとサカマキガイ(軟体動物)
 体長 10 mm位で良く似た形の巻貝だが、外来種のサカマキガイは一般の巻貝とは巻く方向が逆(頂点から見て反時計回り)。汚れた水に多く付着藻類等を食べる。

 ヨコエビの仲間   シマイシビル   ナミウズムシ 
ヨコエビの仲間(卵を抱いている) シマイシビル ナミウズムシ

【参考文献】
『水生生物ハンドブック』刈田 敏 2003 文一総合出版
『水生昆虫の観察』谷 幸三 2005 トンボ出版


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