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 新河岸川のあらまし

文:天田 眞 「エコシティ志木通信」第15号1999.5より


作図:天田 眞

新河岸川の流域

 新河岸川流域は、青梅から東京都心部に至る武蔵野台地のおおむね北半分を占め、川越の旧市街地を北の頂点とする三角形をしています。その南辺は狭山丘陵の南方から板橋区に至り、北西辺は瑞穂町から川越市まで、おおむね入間川とその支流霞川に沿い、北東辺は川越市から赤羽北方の岩渕水門まで、荒川右岸堤防によって区切られています。新河岸川本川は流域の北東の荒川沖積低地を流れ、不老川・砂川堀・柳瀬川・黒目川・白子川等のほとんどの支流は南西から北東に向かって武蔵野台地の上を流れています。

荒川の付け替えと新河岸川の舟運

 新河岸川の本流である荒川は、江戸時代初期までは今よりもっと東へ流れていて、今では荒川の支流となっている入間川が宗岡を洗れていました。寛永6年(1629)に幕府は、荒川を熊谷付近から南へ曲げ、入間川の支流である和田吉野川につなぎました。これにより志木に秩父方面 からの水が流れるようになったのですが、今までの数倍の流域面積を持つようになったので、当然洪水が起こりやすくなりました。

 このころ内川と呼ばれていた新河岸川は、上流では川越の東の伊佐沼から流れ出す九十川を源流とし、下流では現在の和光市新倉で荒川に合流していました。松平信綱が川越藩主だった正保年間(1644〜1647)頃から、江戸と川越を結ぶ舟運に用いられるようになり、新河岸や引又(志木)河岸等の河岸場が栄え、明治期まで物資輸送の中心となりました。このころの新河岸川は九十九曲がりと言われたほど蛇行を繰り返していましたが、一説には舟の運行のため水位 を上げようと、わざと曲がりを増やしたとも言われています。

荒川・新河岸川の改修工事

 舟運で繁栄をもたらした川も、一方では荒川と共に洪水を繰り返す川でもありました。特に明治43年の水害は記録的な被害をもたらしました。これを受けて、荒川では、下流部は明治44年から、県内は大正7年から改修工事が始まり、続いて大正10年から昭和5年にかけて新河岸川の改修工事も実施されました。この工事により両河川共、蛇行部分が直線化され、現在一部に残っている旧河川が生まれました。

 新河岸川下流部は新倉から、新たに造られた岩渕水門まで開削されて、かつての荒川下流部である隅田川につなげられました。一方の荒川は岩渕水門から下流で隅田川の東側に新たに放水路が開削され、東京湾に至る現在の流れができあがりました、一連の工事により水害は減りましたが、このころには物資輸送はすでに鉄道に取って替わられていて、舟運の時代は終わりを告げました。その後、新河岸川は昭和9年に、かつての最上流の河岸場であった仙波河岸跡から川越旧市街地に沿って開削され、市街地の北側で、狭山方面 から伊佐沼に向かっていた赤間川につながれ、現在の新河岸川の流れが完成しました。

新河岸川を流れる水

 新河岸川を流れている水は必ずしもその流域の水ばかりではありません。特に親子の関係である荒川・入間川とは何カ所もで水をやり取りしています。新河岸川最上流部の赤間川は狭山市と入間市の3カ所で入間川から取水しています。志木の新宮戸橋際からは、秋ヶ瀬取水堰から取水した水が隅田川の水質浄化用水として流入しています。この水は荒川の水であると共に利根大堰から取水された利根川の水でもあります。

 一方、洪水時には新河岸川の水を荒川に放流する施設もできています。川越・上福岡・宮士見の3市の境界付近では放水路が開削され、荒川の旧河川であり、現在は調節池でもある「びん沼川」を経由し、富士見市の南畑排水機場から荒川に放流するようになっています。朝霞市下内間木のかつての新河岸川と荒川の合流点付近にも、荒川への放流のための朝霞水門が最近完成しました。この付近には広大な調節池も施工中です。

 新河岸川水系の本来の源流である狭山丘陵の内側は堰止められて、山口貯水池(狭山湖)と村山貯水池(多摩湖)になっています。ここに貯められている水は羽村堰から取水され、地下トンネルで引き入れられた多摩川の水です。この水は東村山の浄水場に送られ、多摩地区の人々に使用された後、清瀬の下水処理場から柳瀬川に入ってきます。志木に流れてくる柳瀬川の水の半分は元をたどれば多摩川系の水なのです。承応4年(1655)に玉 川上水から分水し、志木の人々の生活用水となり、館や宗岡の水田を潤してきた野火止用水も、同じ羽村堰から取水された多摩川の水でした。昔も今も志木と多摩川との関係は深いのです。

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