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宗岡の水塚群エリアのお宝

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荒川の秋ヶ瀬取水堰


天田 眞
(NPO法人エコシティ志木代表理事 2008年9月)

秋ヶ瀬取水堰

↑下流側から見た秋ヶ瀬取水堰。一番左が普段水を流している調節ゲート、
その右が増水時に開放される三連の洪水吐ゲート、右端に魚道がある。

 今から350年程前の1653(承応2)年、江戸の飲料水不足を解決するため、羽村で多摩川を堰止め江戸へ水を送る玉川上水が開削されました。以後300年以上の間、多摩川水系の水が江戸・東京の水需要の中心を賄ってきました。
 玉川上水開削の翌年にはその水の3割を割く分水として野火止用水が開削されましたが、用水の流末は志木に至り新河岸川をいろは樋で渡って宗岡の水田灌漑に用いられました。
 今、その宗岡から秋ヶ瀬取水堰で取水された水が東京へ送られ、東京の水道原水の中核を成す水となっています。

 1.秋ヶ瀬取水堰とは

 荒川河口から35km上流の志木市宗岡に位置し、荒川を堰上げし東京都と埼玉県の水道用水、工業用水及び隅田川の浄化用水を取水しています。総取水量は約65G/sで、堰脇の取水口から取水している東京都上水が約43%、隅田川の浄化用水が約36%、約5km上流で取水している埼玉県上水が約18%。堰の幅は127m、4ヵ所の可動式ゲートで構成され、魚道も設置されています。

 2.利水計画の概要

 東京では戦後の経済復興に伴い水需要が急激に増え、1964年の東京オリンピックを前に水不足が深刻になってきました。
 この問題を解決するために利根川水系の水を大規模に利用する計画が立てられ、62年に「利根川水系水資源開発基本計画」が決定しました。
 その概要は、利根川上流の群馬県内にダムを建設し渇水期のための水を確保する。行田市で利根川に「利根大堰」を建設し、そこで取水した利根川の水を「武蔵水路」(14.5km)を通し鴻巣市で荒川に放流する。宗岡で荒川に「秋ヶ瀬取水堰」を建設し、取水した水を「朝霞水路」(2.1km)で朝霞浄水場(東京都水道局)等へ導水し利用するというものです。主要工事は62年に設立された水資源開発公団(現、独立行政法人水資源機構)が担当しました。

 3.秋ヶ瀬取水堰及び朝霞水路の工事
標高8195m

↑工事中の取水堰を左岸下流側上空より見る。蛇行部分の陸上で施行されている。
参考文献(1)より

 この導水工事全体の完成にはかなりの期間がかかりましたが、東京オリンピック開会までに深刻な水不足をとりあえず解消することが至上命令とされ、秋ヶ瀬取水堰と朝霞浄水場までの水路工事は突貫工事で行われました。
 取水堰は荒川が浦和側に蛇行した部分を利用し、これをショートカットする位置に取水堰を設けることとしたため、本体工事は陸上で施行することができ、工期短縮が可能となりました。
 取水堰脇の取水口から朝霞浄水場等に水を送る朝霞水路は箱型コンクリートの暗渠水路で荒川堤防を樋管で横断し、新河岸川左岸に建設した沈砂池に至りますが、ここで一部を分岐させ隅田川の浄化用水を放流するため新河岸川へつなぎ(新宮戸橋下流側)、沈砂池を経た水は新河岸川の下を伏せ越し(逆サイフォン)でくぐり右岸の東京都の施設に繋げました。これらの工事はわずか11ヶ月の工期で64年8月に竣工し、オリンピックの開会1ヶ月前に通水開始されました。
 この時点で取水されたのは荒川の水でしたが、一連の利根川からの導水工事はその後も続き、65年には一部完成した武蔵水路を経由し見沼代用水からの利根川の水を荒川に流す暫定通水を開始し、68年になって利根大堰及び武蔵水路が竣工し導水計画が完成しました。
 しかし朝霞水路はその後の地盤沈下による損傷が激しく通水に支障をきたすようになったため、既存水路の上流側に新たな取水口と沈砂池までの水路(内法4.5m×4.5m×2連)が計画され81年に完成しました。

  4.取水堰と導水施設の現状

現在、朝霞水路の旧水路は荒川堤外部は撤去され、その上に堤防と取水堰をつなぐ管理橋が設置されています。堤内部分の旧水路は志木市が借り受け雨水調節池(内法3.5m×5.5m×2連×950m)として利用されています。
 東京都の水道原水は新河岸川右岸から朝霞浄水場と板橋区にある三園浄水場へ送られ、朝霞浄水場からは東村山浄水場へも送られています。埼玉県の水道原水は秋ヶ瀬取水堰から約5km上流左岸の大久保浄水場近くで取水されています。
 秋ヶ瀬取水堰の下流側には、水不足で河川水が不足する場合に下水処理水を浄化して補給する樋管があり、上流側には、さらに不足した場合に彩湖(荒川貯水池)の水を補給する樋管が設けられています。
 利根川からの導水については、見沼代用水西縁から利根川の水を荒川に送る暗渠水路も設けられています。武蔵水路は地盤沈下や老朽化により改築が検討されています。武蔵水路と荒川の合流点における水量比は季節により異なりますが2/3以上は武蔵水路の水(利根川の水)です。

道路の下に水路 魚道

↑堤防から取水堰を望む。左奥が取水口、
中央奥が取水堰、右手前が堤防を横切る樋管、
道路の下に水路が埋まっている。

↑左岸側に設けられた魚道。
本年度秋ヶ瀬取水堰の魚道を上った
稚アユの数(4月1日〜5月15日)は過去8ヵ年で 最高の93万9千匹だった。


【参考文献】
(1)『秋ヶ瀬取水堰朝霞水路工事誌』昭和42年 水資源開発公団利根導水路建設局
(2)『朝霞水路改築事業工事誌』昭和57年 水資源開発公団朝霞水路建設所 


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